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未来予測とカロリーゼロ理論

未来予測とカロリーゼロ理論

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雑文 未来予測
近藤 憲児
著者
近藤 憲児

自分でも未来予測を書いてみたけれども、未来予測の話はどうも苦手だ。

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正確には、未来予測を取り巻く議論が苦手だ。

苦手な理由が 2 つある。

その一つを説明するために必要なワードが「 カロリーゼロ理論」。

カロリーゼロ理論は、サンドウィッチマンの伊達みきおが提唱する食品のカロリーに関する説である。

このサイトに記載された主張のいくつかを以下に引用する。

  • カロリーは色がついているため、白いものはすべて0kcalである。
  • カロリーがある食べ物でも、走っている新幹線の中で食べればカロリーがついてこられないので摂取しないという慣性の法則を否定した衝撃的な説も近年発表された。
  • カロリーは食品の真ん中に集まるため、穴の開いている食べ物は0kcalである。

カロリーゼロという結論に対して、全くのデタラメだが妙に尤もらしい根拠を提示することが笑える。ちなみに毛色は違うけれど、武井壮の〇〇の倒し方も似たような構造で面白い。

このようなこじつけによる論理展開を「フロイト的論理展開」と勝手に呼んでいたのだけど、これから「カロリーゼロ理論的展開」と呼ぶことにしよう。

カロリーゼロ理論は、多くの人が冗談として楽しんでいる。ある栄養士がこの理論に真面目に反論したらしいが、多くの人がその栄養士の野暮な反論を笑うことができる。

ここで未来予測の話に戻る。未来予測はカロリーゼロ理論的展開と相性がいい。未来に「〇〇が起きそうだ」という直感的な発想に対して、尤もらしい論理を紡いでいく。未来という原理的に誰も正解を知らないものに対して、いかなる結論も許容されるという性質が、カロリーゼロ理論的展開と親和性があるのかもしれない。

まず、未来予測がカロリーゼロ理論的展開を許容することは、全く変に思わない。未来に対するカロリーゼロ理論的展開を面白く感じる心が、いわゆる SF 的面白さに通じているから。

未来予測を取り巻く議論でカロリーゼロ理論と明確に違うのは、それを真面目に受け取る人が少なくなくいることだ。カロリーゼロ理論の栄養士のような人がたくさんいる。その滑稽さを指摘することに憚られるほどには。

シンプルに思想や歴史についてあまり知らなくて、未来予測の中にあるゼロカロリー理論的展開を見抜けないのか。シンギュラリティ論の立役者のカーツワイルの本を真面目に受け止められようか。あるいは単に読んでないだけか。

カロリーゼロ理論的なものを真面目に受け取る典型的なものは陰謀論だろう。地球が平面であるという主張に対して、尤もらしいがデタラメな根拠を展開していく。

未来予測を肯定しながら陰謀論を否定することは構造上できないだろう。どちらも同時に肯定するか、どちらも同時に否定するかしか、一貫性を保つ選択肢はない。にもかかわらず。というところが、僕の苦手なところの一つ。

もう一つの苦手な要素。これはマジシャンが行う「未来予測」。これはベイズ確率論の話。

マジックの一つにこういうものがある。

「1 から 6 の間で、今あなたが思いついた数字を教えてください。 6 ですね。わかりました。実は私はあなたが 6 を選ぶことを事前に予測していたのです。ほらそこのデスクの上にある本を御覧なさい。本の中に挟まっている紙をみてください。ね、 6 と書いてあるでしょう」

このマジックの仕掛けはこうだ。事前に 6 と書いた紙を本に挟んでおくのと同様に、例えば 1 と書いた紙を胸ポケットにしまっておく、 2 と書いた紙を靴の中にしまっておく、というように、あらゆる数字に対して紙を用意しておく。そして、相手が数字を言ったら、その数字に対応する紙を取り出す。

つまり、相手がどの数字を言っても、マジシャンはそれに対応する紙を取り出すことができる。これは、マジシャンが未来を予測しているように見えるが、実際にはそうではない。

これと同様に、無根拠であっても数撃ちゃ当たる的に未来の姿を多く主張しておけば、その内の一つは当たるだろう。先程のマジックのことを本当に未来予測したと言わないのと同様に、この場合もそれは予測とは言わない。

「たしかに、いろいろな人が未来予測をしたら、そのうちの誰かの主張は未来を的中させているだろう。それでも、その未来を当てた人は、やっぱりすごいだろう」と言う人もいるかもしれない。では、1等の宝くじを当てるのは奇跡のようなものだが、実際に1等のくじを出した店舗は他とは違うなにかを持っているか?「まさにその人が」1等のくじを当てるのはすごいけれども、「全世界の少なくとも一人が」1等のくじを当てるのは全くすごくない。ここが混同されがちである。これを混同されがち故、ベイズ確率論の理解が一般に難しいとされるのだろう。

だいぶ荒い文章だけれども。

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